読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

おしろ宮殿

一寸一杯お気軽に

「戦場のメリークリスマス」DVDが簡単に観られる様なったのでもっと皆観るべき

戦場のメリークリスマス [DVD]

戦場のメリークリスマス [DVD]

 

戦メリが好きすぎるのですが、一般的には坂本龍一の作った主題歌ばかりが有名で、映画を観たことがある人は少数派なのではと危惧しております。
と言うのも、長らくDVDが廃盤となっており入手困難でしたし、再版された今もレンタルは解禁されていない様なのです。
追記:レンタルも解禁されました!!

日・英・豪の合作映画なので版権がムツカシ〜感じなんでしょうけど、もっとこの色んな意味で面白い映画を広めたい!!という思いを込めて、僭越ながら解説してみたいと思います。

まず出演者が豪華ってレベルじゃないのですが、デヴィッド・ボウイですよ!!
ボウイ、坂本龍一北野武…あと内田裕也ジョニー大倉うーん濃い。
若かりし日の内藤剛志かもちょろっと出ていい味出してます。
物語の中心的立ち位置である英国人捕虜ローレンスは、トム・コンティというイギリス人俳優が演じていますが、ダスティン・ホフマンに似ています。

この映画は邦題に「戦場」とついていますが、戦闘シーンは一切出て来ません。(ちなみに英題は「Merry Christmas, Mr. Lawrence」であり、これこそ映画を観た人間なら耳にするだけで胸がざわつく、あのラストシーンのフレーズです)
そこに描かれているのは、西洋と東洋の価値観の違い、そしてその全く異なった価値観・立場を持つ人間同士に、何が生まれ得るのかという非常に今日的なテーマです。
wikiにある『後期の大島作品に底流する「異常状況のなかで形作られる高雅な性愛」というテーマ』も、まさに。

しかしながら、複雑なテーマを描いている様で、綻びからクルッと生地を裏返せば、極めてシンプルな人間の心情を描いているだけにも見える、狙ってるんだか滑ってるんだか分からない味わい深さがあるのもこの映画の魅力です。

目の上真っ青なバンコラン風軍人坂本龍一

30代半ばで高校生役を演じさせられ涙を誘うボウイの姿、

演者のほとんどが演技素人の為ほぼ聞き取れない台詞、

イギリス人俳優の喋る超カタコトの日本語…


それらが醸し出す違和感、言うなればつっこみ所もあって、妙なファンタジーっぽさが作品全体を覆っております。

そして坂本龍一演じるヨノイ大尉、この厳格で硬派な軍人であるはずの役がおこす行動が、しばしば恋による暴走にしか見えない場面があり、謎のスリルを味わう事になります。

立場の異なる人間同士の深層での共感を描いている一方で、そんなもんだよなあ…wという、ボウイ演じる英国人捕虜セリアズの美貌に狂ったとしか思えないヨノイ大尉(アイシャドーきつめ)に、笑いがこみ上げてきちゃう所が好きなのです。
また、それこそが人間の真の行動原理であると私は信じております。
宗教も、愛国心も、信念も関係なく、最後に勝るのは美しき男/女へのLOVEに他ならないという…これぞ真理。納得のオチです。

グッとくるシーンとしましては、ヨノイ大尉が早朝から真剣稽古をして発する気合いの雄叫びに、捕虜達が怯えているという苦情が入るシーンで、「あいつも怯えてるのか…?」と暗にセリアズの存在を仄めかせ、せやで!と返ってくると、じゃあやめる!と即決するシーンなどがあります。

やめんのかよwwww

ヨノイは部下や捕虜に断食の”行”を強要する等、いかにも精神性を重視した硬派男なのに…恋は矛盾やでぇ…とざわめきが止まらない名シーンであります。

他には、日本軍兵士が独房に入れられたセリアズを暗殺しに行った所をヨノイに見つかり切腹して詫びるシーンの名台詞、「隊長殿!この男は隊長殿を狂わせる悪魔であります!!」等もいい味出してます。
状況を解説し、死をもってその深刻さを表現する都合のいい部下…痺れます。
私は原作を読んでいないので、もしかして原作者の体験に基づく実際の出来事なのかもしれませんが、とにかく大島渚のしつこい演出と坂本龍一の素晴らしすぎる音楽のせいで、やたらめったらドラマティック!

と、茶化す様な事ばかり書いてしまいましたが、本当に真面目に良い映画なんですよ!むしろこの、クスッときちゃう独特の感じも含めて、人間を描いている名作なんです!
クスっとこなかったら重すぎるかもしれないですし、このストーリーは…。

それにしてもたけしが凄いです。北野武映画より、こっちの方が全然役者として凄味がありますよ。それだけでも観る価値はあると思います。

たけし演じるハラ軍曹はしばしばそのラストから「本当は善良」みたいに言われる事もありますけど、実に残酷で俗物的で、まさに「THE 人間」…自分を重ねて見てしまいます。そしてたけしが演じたからこそ滲み出ている感がある、あの狂気こそが最高です。

私はあのクリスマスの夜のシーンの「狂ってる」という台詞は本当にそのまま吐き捨てられた意味だと思いますし、ラストの牢獄のシーンでも、ローレンスはちょっと困った様な、呼ばれたので義務で来ただけでめんどくさい様な、そんな雰囲気もあったと思うんですよね。
だからこそ、あの顔のアップにあの顔の台詞、通じているのか一方的に投げかけられたのか分からない、あの台詞が何とも言えない余韻を残すんです。

過度なネタバレを避けて(るつもり)書けるのはこれくらいが限界ですが、本当に一見の価値のある映画なのでぜひぜひ多くの人に観て欲しいなあといった所です。

ここまで読んで、もしかして大島監督の遺作である「御法度」のような腐女子発狂の同性愛映画なの…?とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、全然違いますからNE!

最後に、この長文を読んで下さった優しい皆様に言ってはならぬ一言を申し上げる様ですが、上記の私の見解はゾッとするほど独断と偏見に満ちておりますので参考にしないで下さい。
観てNE!