おしろ宮殿

一寸一杯お気軽に

BUCK-TICK 『No.0』が大大傑作すぎるので感想述べる

こんなものに、リセットするかの様に『No.0』なんてタイトルつけられたらどうしたらいいんだよ!!!
事態が飲み込めないくらいの名作です。
希望しかない絶望だ!!!

マジだってマジ!マジ傑作!

memento mori』辺りから毎回10年で最高の出来とか昨年を上回る芳醇な香りとかボジョレーみたいなこと言っておりますが、今回はマジ!!マジだって!!
今回ほど誰もが口を揃えて「最高傑作」「圧倒的」「何でこのキャリアでこんな作品作れるんだ」とか言っているのは見た事ないですよ。それくらいマジで信じがたいくらい圧倒的だった!!
何だかBOWIEの新譜を聴く度感じていたものを、B-Tにも感じてしまいました。
芸術はまだまだここまで出来るんだと、力強いヒーローの背中を見て希望を貰える感じ、すごい。やばい。とんでもない。語彙なら俺の隣で冷たくなってるよ!

今月末からスタートする全国ツアーのチケットが前代未聞の入手困難という事態を迎えておりますが、そらそうよって感じだなもはや。
BUCK-TICKは今が一番格好良い、世界一かっこいいと20年以上言い続けて参りましたがいよいよですよ。それはもう現実なのだなと実感しております。前前前世から5人一緒に薔薇色十字団やってんだぞこっちは!!!

ざくっと総評

どうせまた長くなるに決まっているので、言いたい事を先にざくっとまとめると…(「長文」と言う名の病気を治療する病院の紹介状下さい←あっちゃんにも通じるはずのガリストギャグ)

  • 『ONE LIFE, ONE DEATH』以降B-T普遍のテーマである「愛と死」に加え、今井さんはシュルレアリスムキュビズムを中心とした芸術に対する憧憬が爆発し、あっちゃんはより明確に「反戦」を掲げ世界とも自分とも向き合い、なんかもうすごい。
  • アルバムとしての流れと物語性、ループする仕組みが完璧すぎる。1時間通して聴いて引き込まれすぎてあっと言う間。飽きや中弛みが少しもない。
  • どの曲も10秒聴いたらB-T!って分かるアクの強さなのに、長年のファンが聴いても『過去のどのアルバムにもない』と感じる斬新さ、新鮮味。4人の個性的なマニピュレーターを器用したデジタルなアレンジが目立つけど、それより作編曲の作法?が今までとかなり違う気がする。あと今井節が炸裂したギターリフがほぼない!
  • 上記を含めた大ベテランの作品とは思えない冒険心、やりたいことが詰め込まれた熱量の素晴らしさ。
  • これしかやらない!という強い意志と、"業"を甘受した様な覚悟が圧倒的。
  • あっちゃんと今井さんはもはや二人で一人、バラバラで真逆とすら言えるの個性を持つのに同じ人物の様に重なる瞬間も出て来た。

全然簡潔じゃなくてワロタw は???(情緒不安定)

音楽的知識に乏しいので、どうしても具体的にあそこの音が○×△〜〜とかよりウホウホウホウホ!ウホッ!みたいな…抽象的表現…になってしまうのですが。

今井さんの、どうしてそこにその音があるのか全てに理由がある様な、カチッと組み立てられハマッた音作りが好きなんですよね。確か今井さんは同じ様な事をクラフトワークに対して言っていたような記憶があるんだけども。
音の厚みをかさ増しする様に何となくであれこれ付け足されてる、ごまかして見栄を張ってる感じの音は好きじゃないのよ。

よし!1曲ずつの感想も書いCiao!

1曲ずつの感想は更に長いです

01. 零式13型「愛」

この不穏でノイジーでスペイシーなイントロを聴いただけで、あー!こりゃ傑作きたかも!と察してしまった。部屋を暗くして目を閉じて聴いていると、自分がまさに胎内と言う宇宙からドロップされたような感覚になれました。生まれたてのエイリアンの、なんかネバネバしたものに包まれて醜くほぎゃあああって産声あげる感じ。
何かわからんけど合唱したいなって思いました。中学のクラスで。
この世に生まれて光輝いて幸福と言うより、何が待っているか分からない、むしろ安らぎの無から混沌に放り出されたかの様な不安もある感じ。
だけど最後に「愛」と名前を貰ったのです。やるっきゃねえ!!!!
漲る生命力と、そして知る孤独。
ループして2週目に来た時に完成する曲って気もします。

02. 美醜LOVE

B-Tが得意とするスタンダードなロックに、日本語が分からない外国人ファンの耳にも残りそうな「ビシューラーッブ!」と言うインパクトしかないキャッチーが過ぎるフレーズ。あっちゃんだから歌えるテーマとも言えるよ、

美が切れ味を増して おまえを愛してるぜ

なんて!!生と死、愛と憎しみ、美しさと醜さ、相反するものが互いを際立たせ生まれるパワーが好きなんだなあ、あっちゃんは。

03. GUSTAVE

ダ、ダセ〜〜!!かっこいい〜〜!!ダサさは強さ!!(黒さは強さby山形ユキオ
YOW-ROWさんによる遠慮なしのEDMアレンジがなかなかに軽薄で、B-Tが得意とするトランシーイケイケロックが節操なしに繰り広げられていて濡れます!『baby, I want you』『美 NEO Universe』とかに続く曲としてもアリかも。
歌詞はまさかのキャッキャッキャキャット!ヒグチユウコさんのギュスターヴくんにインスパイアされたそうですが、いやあここまできたか!

しっぽおっ勃てたら Ready Steady NEW ROMANTIC

ですよ!!いや〜〜もう何も言うことはねぇっす、あっちゃんお前がナンバーワン、いやナンバーニャンだ…ナンバーゼロだけど…
あとヘ□インはダウナー系のドラッグだからパーティー行くのには向かない気がするナ…

04. Moon さよならを教えて

漂う様なやわらかさが、どこか不安定で美しく優しい曲…。
朝は来るかしらって歌うのに、"夢の始まりね"って表現するあっちゃんがずっと大好きです。悲しみなんて吹き飛ばして前へ進もうぜ!って言われても吹き飛びやしないのが分かって居るからこそ、かなしみを美しく歌ってくれるあっちゃんがずっと大好きなんだよ…うっうっ
夜に、月に、"さよならを教えて"って……窓枠に凭れて涙をこぼしながら月を見上げているのかなあ…。
最後に今井さんが願いを叶えるお月様のようにコーラスで乱入してくるところが最高すぎませんか!ちょっと笑ってその後泣いた。「何泣いてんだよおしえるぞ〜」みたいな暖かさを感じて。
前回のツアーで、痛切に歌い上げるあっちゃんの周りを今井さんが軽快なステップでくるくる旋回していたのを見た時と同じ、ああ今井さんが居るから大丈夫だ!!みたいな安心感。あっちゃんが「死」「苦しみ」「悲しみ」とかを歌いながらもテーマに反して穏やかにバンドを長く続けて来られたのは、BUCK-TICKだからなんだよなあって思います。

05. 薔薇色十字団 - Rosen Kreuzer -

ん〜〜〜!!ヒデ曲でのあっちゃんのやんちゃし放題が今回も違う角度からブッ飛ばしてきましたね!!何でこの曲にこの歌詞なんだどんな発想なんだ!!
POLYSICSハヤシくんのおもちゃっぽいピコピコした音作りと、Rosen Kreuzerなんてダサ耽美なタイトルの違和感が奇妙さを際立たせていてGOOD!
繰り返し抑揚のないメロで団名を唱えられ続け、対比する様に抜ける美メロで

愛を語るんだ 血に塗れても 夢を語るんだ 君が薔薇なんだ

と歌われると、強烈に洗脳される感じがします。最終的には自分も薔薇色十字団〜♪って歌いながら隊列に加わってしまうやばい曲。プロパガンダ的な。最後に"薔薇 薔薇"と声を裏返らせ乱れていく感じが狂気に取りこまれたっぽくて、あっちゃんが何となく何を言いたかったのか分かる気がします。

06. サロメ - femme fatale -

クサくて泣かせるヒデ節メロにあっちゃんの極限お耽美、黄金コンビですね!この曲はYOW-ROWさんのビリビリしたEDMエッセンスが合わないからこそバッチリ合ってて最高だなと思いました。ちょっと前ならアコギとか入れつつきっと『女神』みたいなアレンジになってたはずの曲だと思うのよね。
皿に首を乗せて踊るサロメがブロックノイズで乱れて燃えていく感じが見える。かっこいいです!今回のヒデタイムはめちゃくちゃいいぞ!

07. Ophelia

A,Bメロのオーガニックで爽やかな雰囲気から、歌謡曲的で情熱的なヒデ節サビで感情爆発する感じ、めちゃ好きじゃ!
発狂したオフィーリアが川に浮かぶ姿、死に魅了されて永遠になってしまう感じ、素晴らしい。ヒデ曲ではあっちゃんは割と自分の耽美趣味をそのまま表現出来る様でいいですね。そしてCube Juice氏の無機質なのに切ないほど美しい音作りもヒデ曲と本当に合うんだよね…。

08. 光の帝国

で、でた〜〜今井ワーーールド!!
シュルレアリスムと、今回特に影響下にあったと言う稲垣足穂的な奇妙なSF冒険譚っぽさ、独特すぎて常人に解説が許されてる気がしない!ライブで聴いたらもっと世界観が理解出来る気がする。めちゃ好きな曲だけど上手く表現できない、表現できない様に作られた曲って感じ。
ノイジーで歪なギターソロが格好よすぎませんか!これもまた新しいよ、今井さんのトリッキーなギター史の中でも!

09. ノスタルジア - ヰタ メカニカリス -

あっちゃんと今井さんの絶妙すぎるデュエットタイムに突入ですよ。これぞB-Tにしかない独自性!系譜的には『Madman Blues』とかの流れなのかもしれないけど、今井さんのスチームパンクとかサイバーパンクだとかのSFブッ飛びソングの中でも、ひとつ突き抜けた奇妙奇天烈さを感じた!すごい!
ポエトリーリーディングの部分、2人の声が重なってどちらが語っているか分からない始まり方がクールすぎる。
あっちゃんの緊迫感のあるリーディング、段々キマッてきて煽り立てる様な芝居がかったものになってくるのが凄い。今井さんの静かで真理を知っているかの様なリーディングもいい!またもや今井さんの隠れたラップスキルが発揮されてしまいましたよね…
最初、森鴎外の「ヰタ・セクスアリス」のパロディなのかと思ったら、稲垣足穂の晩年の短編集に「ヰタ マキニカリス」ってタイトルがあるのですね。それ自体が森鴎外のパロだそうですが。

10. IGNITER

つよい。ヒデタイムを抜け始まった今井さんの奇天烈ワールドですが、ついに爆発した、余りにも格好いいです!!!!

地上火天怒焔(ちじょう かてん ど ほむら)

だよ!ど!どほむら!ま〜た語呂がいい、ラップスキル!!
そこに追い打ちをかける様に瞬時に交代して前衛に出て来た櫻井敦司様の

紅蓮 烈火 火焔 轟 轟 轟(ぐれーんれっかー かえん! ごうごうごう)

だよ。-9999だよ。パーティー全滅だよこんなもん。突然のラスボス過ぎるだろ。ライブで聴くのが楽しみすぎるよドMだから!
そして、ひええええかっこいいいいって焼かれていたら…(つづく)

11. BABEL

IGNITERからの繋がりが良すぎるだろう魔王降臨じゃん。
さっき倒したラスボスだと思って居た戦闘集団は四天王にすぎなかったという絶望
…ウッ
もう魔王ともなると余裕が凄い。フリーザ様もゲマもあっちゃんも言葉使いめちゃくちゃ丁寧だもんね…はじめてですよここまで私をコケにしたオバカさんは…(粗相をした猫の腹に顔を埋める)
冗談はさて置き、全曲とは言わないまでも全シングルなら私はBABELが一番凄い曲だと断言出来ます名曲すぎ!ここでこのシングルかよ!!って震えて眠ってから暫く経ちますが、今聴いても少しも畏敬の念が薄れる事がないです。
破滅に向かうしかない人間の愚かさと欲望をここまで完璧な憑依芸で表現した人がいただろうか、余りにも似合う、余りにも完璧。今井さんの、ギターを寝かせてネックをつま弾いてストリングスみたいな音をさせるギターシンセ芸が見た目も含め格好よすぎる。
あと、猫カフェ「わたしは無である」のオープン待ってます…。

12. ゲルニカの夜

言葉にするのはむずかしいよ。
あっちゃんはいつも自分に出来るのか、偽りがないのかを問いかけた後に、私達にも問いかけるんですよね。
感想書こうと聴いてる今も当たり前の様に泣いていますが、すごい曲です。

13. 胎内回帰

どこまでも優しいメロディーに乗せて、あっちゃんの断末魔の叫びが轟き、四肢を四散させていく歌だ。そこに今井さんの天使の息吹の様な、不思議に温かいコーラスが聞こえて来てさあ、胎内に還してくれるんだよ。メロディーはママの鼓動で、ハーモニーは胎内で羊水の渦に巻き込まれていく音なんだ、きっと。
人間の欲望によって理不尽に散らされた命が、せめてママの胎内へ還っていけますようにってあっちゃんの優しさがさあ…。特攻隊をイメージしたって言っていたけれど…。
私は常日頃は輪廻転生も占いも一切信じないタイプの人間だけど、そんなものはないと思うからこそ、慰めとしての美しい物語には本当に本当に慰められます。生きる人間の優しさと想像力にこそ。あっちゃんの死や悲しみをロマンティックに歌う様に、どれ程救われてきたか。
そして胎内回帰からまた1曲目にループした時、『No.0』は完成するんだと思います。
B-T第6のメンバーといわれる横ちゃんのアレンジの安心感もすごいっす。他のマニピュレーターにばかり触れてごめんね!愛してるよ横ちゃん!

 

No.0 (通常盤)

No.0 (通常盤)

 
ポスター ルネ マグリット 光の帝国

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