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テニミュ4thシーズン 関東氷帝を見た感想

テニミュ4thシーズン 関東氷帝を見てきたんだぞ!!

4thシーズン??*1って方は、3月まで全国で公演中&当日券も多め&チケ代奇跡の6800円の当公演を是非ご覧ください!!
出演者が無名の若手俳優ばかりとは言え、この物価高時代に3時間超えの大作でこの値段はあり得ない。2.5次元ミュージカル界のエルレガーデンや!
実態はおばさんオタクへの福祉でも、少年漫画としての矜持を感じてアツい。

しかもテニプリにおける関東大会氷帝戦は、ドラゴンボールで言うなればフリーザ編の様な原作通しての人気セクションなので、一度はテニミュ見てもいいかな〜と思いつつ年月が過ぎるばかりの方は今、今です。

さらに今回は開始30秒で元が取れると言って良く、そこから3時間以上ずっと桝から溢れるポン酒を啜るが如き殿様観劇も可能です。
と言うのも、実質今回の主役と言ってよい敵のボス 跡部役の役者が来年20周年を迎えるテニミュ史の中でもおそらく一番歌が上手く、グランドミュージカルレベルでも大当たりなモンスター歌唱力をフルに活かした独唱スキャットから開演するんですよ。立川ステージガーデンをバリバリ震わせる声量に笑っちゃった…。

とは言え、4thシーズンは3rdシーズンまで続いた脚本・演出・作詞・作曲・振り付けを全て一新した公演。タイトルは同じでも別プロダクションでの再アニメ化くらい別物なのでして、そこは賛否両論もある様です。

1stシーズンから観劇している私としても、旧作品との違いを感じながら楽しんだりなんだりしたので以下にその感想をまとめます。
ちなみに私は2ndシーズンの全国氷帝を最後に一度生観劇を離れ、3rdシーズンはたまにWOWOWで見る程度でした。コロナ禍に新テニミュで久々に生観劇復活し、4thは今回やっと生で観劇できたという感じです。

テニミュとの違い、一人一人が平等に輝くキラキラ群像劇

そもそも原作が相当なクセつよなのですが、それをミュージカル化したテニミュも作詞の三ツ矢雄二先生と振り付け&演出の上島雪夫先生によってまた別方向のクセが追加され、とんでもない個性の塊空間になっていました。

現在、その2大巨匠は後続作品「新テニミュ」に移動する形でテニミュ本公演からは離れ、まさにシン・テニミュと言うべきとんでも最高ミュージカルを作ってくれています。という訳でテニミュ4thシーズンはオリジナルスタッフの手を離れ、原作が同じであること以外全く別の作品としてリニューアルスタートしているという感じです。多分。
裏方のスタッフさんは同じなんだろうけど。

3rdシーズンまでのテニミュ
熱血/昭和/特撮/命懸け/ギラギラこってり/モブがいて主人公が絶対のジャンプ漫画
だったとしたら、4thシーズンは
青春/部活/令和/等身大/キラキラあっさり/一人一人が平等に輝く群像劇
という印象!!

今回は正義も悪もない、氷属性の残虐集団もいない、勝者は敗者を意のままに出来るとか言わない普通の私立中学生が相手の青春部活群像劇でした。
旧作は「テニスの王子様」はあくまで主人公 越前リョーマのことだったけど、今回は「俺たちテニスの王子様!」って言ってるのよ。
全員主役の青春群像劇、ああ令和。

良くも悪くも旧作の「3人でダブルス」みたいな荒唐無稽デフォルメ特撮みがなくなって、ちゃんとテニスしている印象でした。さらに「古武術から学んだ演舞テニス」等原作由来のトンデモすらひっそりと排除されていて、作詞脚本演出の三浦香テニミュをノーマルウォッシュしてきてる!と怒るツイートなんかも散見したり。

私は旧作とは別物として見ているので、許斐剛と言うよりもはや車田正美に近い大ゴマバコーン!!!演出から、Z世代向けの深夜ドラマの様な彩度の高いビジュアルのドラマを見る気持ちに切り替えましたよ。

おかげで(?)レギュラー落ちして必死に這い上がる宍戸とその宍戸を慕う健気な後輩長太郎が響きまくってしまい、力尽きるまで闘う樺地とタカさんの試合ですら真っ直ぐに頑張る学生の試合を見ているかの様な気持ちで泣けました。
もしかして私が中年になったせいもあるのかもしれないけど!

長太郎、この世のかわいい後輩属性を全て集めて作られたかの様な愛くるしさで、何でも買ってあげるよぉ…という気持ちに。エ゙ッエ゙ッ(尾田絵泣き)

圧倒的すぎる跡部、ボロボロの手塚

前述した通り、とにかく跡部役の高橋怜也くんが耳を疑う程歌が上手いので、当て書きなのか歌パートが多い、多い、とにかく多い!
幸い原作における跡部も圧倒的存在感なので問題はないのだけど、ライバルである手塚との間にすら圧倒的差を感じてしまうのが良いのか悪いのか。手塚役の山田健登くんもめちゃくちゃ上手いんだよ!十分に!

普段はクールな手塚がボロボロになり怪我をしても試合をするという、原作の大事なターニングポイントがよりリアルに描写されていると言える気もしますが。そして新世代のチームの柱、主人公リョーマに繋がるところも熱いし。
ただ、そもそも手塚の歌唱パートが少なすぎる気はするんだよな…。
その分、高飛車な跡部がズタボロになっても戦う手塚への敬意に目覚める感じは丁寧に描かれているなと思いました。

実写化の"リアル"さとは

ストーリーをどう表現するかは目指す方向性を極めれば良いと思うのだけど、一方で試合の描写、必殺技の説明などはあっさりしすぎて"今何をやっているのかわからんな"と思う場面がちょいちょいありましたよね。

手塚の「零式ドロップ」や不二の「白鯨」の球筋表現が控えめなので、どんな技なのか伝わらないのよ。空想科学的な意味でリアリティある技の効果音も控えめでした。

日吉の「演舞テニス」も何がしたいのかあまりわからなかったし。まあ原作からして論理破綻してるんだけど、それを"凄いんだぞ!"とわからせる外連味を削ぎ落としてるんですかね全体的に…。

ちょうど「岸辺露伴は動かない」のNHKドラマを一気見していたのだけど、あれでスタンド能力を「ギフト」とか言ってぼやかして、具現化したスタンドも出さないのと同じというか…??
"実写化は漫画の誇張表現を抑えてリアリティあるものにすべき"って思想があるのかな?るろ剣の実写版も技名を叫ばないとききました!

と言いつつも、私がよく見ていた1st〜2ndシーズンに比べての話なので、十分派手な演出はあります。

巨大舞台装置とプロジェクションマッピングは邪魔

4th初演をWOWOWで見た時、なんだこの巨大で邪魔な舞台セットは…!ステージが狭く見えるしやめてくれ!と思ったのですが、何公演か経て今回は解体されて一部しか使われていないらしいですね。それでもデカかったけど。
"クソデカセット"で検索すると悪口がバンバン引っかかるのは草です。

で、そのゴテゴテした舞台セットに試合中は常にプロジェクションマッピングが投影されているので、空気中に塵が漂う倉庫みたいに役者が埋もれて分かりづらくなってしまい残念でした。
プロジェクションマッピングを使うのはいいけどメリハリをつけて、ここぞと言う時だけで良いと思ったんだけどな…。

曲と歌詞は旧作に寄せつつバランスを取っていた

4th初演の時は"若手作曲家だけあってオシャレな曲が多いなあ"と思ったのだけど、今回は佐橋先生イズムを感じるギラギラダサ強い曲が多かった気がします。かなり寄せてきている??間の何公演かを見ていないのでどういった経緯があるか分からないのですが。私は佐橋先生の曲が大好きなのでスッと入り込めました。ある種の"テニミュはこうでなくちゃ!"感。

シティポップをはじめ80年代サウンドが流行ってるので、若い子が聞いてもいい感じに聞こえてそうだしね。跡部のソロ曲とか。

歌詞は「夏の前に熱いコートへ俺たちを連れ出してくれないか」みたいな旧作ではあり得ないオシャレ歌詞が爽やかで良いと思ったし、一方で「ロイヤルスラムで待っててやるぜ」とか三ツ矢イズムを継承したかの様なパンチラインも飛び出して、バランスを考えている印象でした。

失われるウエストサイドストーリー感と、新しいフォーメーションダンス

関東大会開始時の曲など全員で歌い踊る曲は、敵と味方が押し引きするウエストサイドストーリー的なコントラストがぼやけてごちゃごちゃしている様にも見えたけど、群像劇という全体の印象とは一致するのでまああれでいいのか…みたいな気持ちです。

跡部のソロ曲で氷帝がアイドルみたいになる、昔はなかったダンス&ボーカルグループ的なフォーメーションダンスは楽しかったです!上島先生のコンテンポラリー振り付けではあり得ない、トレンドな振り付けね。どの出演者もダンスの平均レベルが高いので見ていて安心感があります。

守られる2次元キャラ

レギュラー陣以外の脇役キャラを正式メンバーとしてどんどん追加するのには反対!!4thに始まったことじゃないけど。
原作ファンは"あのキャラも追加されて嬉しい!"みたいに言う人も多いみたいだけど、精鋭感が薄れてボヤけるのよ。舞台の分かりやすさとは反比例する蛇足的ファンサだなと思っております。

あと、かつてはあんなにアドリブばかりでキャラ崩壊、カーテンコールからは中の人に戻って大はしゃぎって感じだったのが、いつの間にか徹底してキャラを守る様になっていて驚きました。ヒプステとかもそうだし最近はそれが主流なのかしら。
カーテンコールでも絶対にお辞儀をしない関東大会時の不遜な跡部は良かった。

キャラが増えたり守られたりするのは、この20年でオタクが主権を獲得して、2次元キャラと2次元キャラを愛することが尊重される世界になったのもあるのかな〜?と思うなど。

とは言えテニミュは相変わらず駆け出し役者のセルフメイクなので、顔面落書き大会を楽しむことは引き続き可能です。
他の2.5次元ミュージカルがプロのヘアメイクによる神レイヤーレベルになってきているのに対し、いつまでも原始の鼓動を聞かせてくれるテニミュが大好きだよ。

以上、長々と感想を綴りました!
というわけでトータルはやっぱり満足した!やっぱテニミュ最高!!!!!
終演後の立川が青学vs氷帝でデコられている様にしか見えなかったです。

*1:テニミュは原作を最終巻まで上演し終える毎にリセットして1巻から再スタートし、1stシーズン、2ndシーズン…と数えている。シーズン毎にキャストは一新され(正確にはシーズン中にも交代はする)演出や曲もブラッシュアップされてきた